住職レター 令和3年8月号

 昨年の夏は、「来年こそは、当たり前の日々を取り戻し、いつも通りのお盆を過ごしたい」と願っておりました。誰もが一年も経てばコロナも収束すると信じ、オリンピックを始めとする数々の行事を1年延期しました。
 しかし、ワクチン接種がすすみ、治療薬の開発もすすんでいるはずの現在も、ウィルスの変化に人間は翻弄され続けていて、いまだ日常を取り戻すには至っておりません。今年の夏も相変わらず我慢を強いられ、行動の制限を余儀なくされ、お盆の行事もすべて縮小となりました。
 昨年一年間オンライン授業を受けていた大学生の長男は、4年生になる春に、卒業論文のためのゼミに参加するため東京に戻っていきましたが、感染再拡大のため、夏休みは帰省出来ませんでした。そのため、8月1日の永代供養合同法要と、19日の施食会は、今年もご随喜のご寺院さまも参拝の方もお呼びせずに、高校生の二男と二人でつとめました。いつもなら、一挙手一投足を兄がチェックしていて、見よう見まねで何となくこなしていた弟は、いつもの大らかさがなく、その上正座もキツいので元気がなかったようでした。しかし、初めて殿鐘(でんしょう)打ち出しに挑戦したり、読み込みの声も初めは小さかったのですが、回数を重ねる毎に大きくなってきて、良い経験になったのではないでしょうか。
 お盆の棚経も、半数以上の方が、お寺での住職によるよみこみを希望されました。こちらも二男と二人でつとめさせていただきました。
 今年のお盆は、コロナ禍に加えて、日本中いたるところで豪雨災害にみまわれました。西日本豪雨の際に何度も繰り返され、聞く度にトラウマになりそうな「線状降水帯」という言葉を何度もニュースで聞きました。晴れの国といわれる岡山県でさえ、カラリと晴れた日は一度もなく、雨が少しでも止んだ隙間をぬってお墓参りをするようなお盆期間でした。迎え火も送り火も雨を避け、軒下で焚きました。13日の朝は、明け方になるとお墓参りの方がボツボツ来られるのが常ですが、それもなくなんとも寂しいお盆の入りでした。
 ボウフラ対策のために蓮の鉢に入れていて、卵がかえって数が増えたメダカを、欲しい方に差し上げると張り紙をしていたところ、何人かの子どもたちがメダカすくいを喜んでくれました。暑い中マスクをしたままでかわいそうでしたが、子どもたちの笑い声が響くと、大人たちも笑顔になります。少しでも楽しい時間を過ごしてもらえたなら幸いです。







前号住職レター一覧次号