住職レター 令和3年11月号

 11月になると県南部も紅葉が美しくなってきました。今年は気候のせいか、楷の木のオレンジ色がとりわけ美しく、モミジと銀杏とのコラボを楽しませてくれました。いつまでも暖かい日が続いたためか、冬の花が早くも咲きはじめ、冬野菜も大きくなりました。ただ寒さに弱い虫たちがいつまでも元気でいて、野菜に虫がたくさん付いているのには閉口します。それでも寒くなる前に片付けようと、干し柿や沢庵、味噌の仕込みなどに追われる毎日です。
 この秋は、新型コロナウィルスの感染者が何故か日本だけ、急速に減ってきました。ワクチン接種がすすみ、感染症対策が身についてきたことなどが理由に挙げられていますが、はっきりしたことはわかりません。観光地や飲食店も、活気づいてきました。倉敷でも美観地区などでは修学旅行生や団体旅行の方も増えてきました。まだマスクは外せませんが、楽しそうな生徒さんたちを見ると嬉しい気持ちになります。
 コロナが少しおとなしくしている間に、私も何か寺かのお寺巡りをしてまいりました。まず新見の楊柳寺さま、同じ曹洞宗のお寺です。連なる山々や川が見下ろせる風光明媚な場所に立派な永代供養墓が作られていました。そして近くにある、同じく曹洞宗のお寺、西渡寺さまに向かいました。今年亡くなられた先のご住職が作られた白龍殿へと続く白い千本鳥居が見事でした。お寺のまわりは、初夏には花菖蒲やアジサイが咲き誇ります。ここは私の母方の祖父が住職をしていたことのあるお寺で、子どもの頃から何度も訪れていますが、昔と違い道もすっかり整備されて観光スポットになっていました。
 また別の日には、子どもたちを連れて尾道の千光寺さまを訪ねました。言わずとしれた名刹ですが、天気にも恵まれ、ロープウェイで登るお寺から見た尾道の町は絶景でした。子どもたちは石鎚山鎖修行をしたり、文学のこみちを歩いたりして楽しそうでした。枚数限定で用意されている見事な切り絵の千手観音さまと毘沙門天さまの御朱印をいただきました。ちょうどその日は、尾道市民俗文化財に指定されている「ベッチャー祭」の日にあたり、商店街は賑わっていました。「ベタ」、「ショーキ」、「ソバ」という鬼のお面を付けた氏子たちと獅子が、神輿とともに市の中心街を練り歩き、子どもを見つけると追い回し、手にした「ささら」や「祝棒」で頭や体をたたきます。その日のタイムスケジュールは密集・密接を避けるため公表されていませんでしたが、運良く商店街で出くわし、お練りを見ることができました。コロナと共存しながらも穏やかな日常を過ごせる、こんな日々が続くことを願ってやみません。







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