住職レター 令和2年9月号

 境内の真ん中に数十年間、シンボルツリーとして存在していた木があります。名前はわかりません。落葉樹なので、一年中、小さな葉が落ちてきて、掃除が大変でしたが、子どもたちの成長を見守り続けてくれた愛着のある木でした。真っ直ぐ伸びた幹には、バスケットのゴールを取り付け、遊んだりもしていました。しかし何事も諸行無常、子ども達も大きくなり、木の下で遊ぶこともいつしかなくなりました。そして何より本堂や庫裏、納骨堂など建物からほど近く、超大型台風などの自然災害が尋常でなくなった昨今では、境内に鎮座するには大きくなり過ぎため、思い切って伐採することにしました。後期も大学がオンライン授業になって、当分家にいることになった長男にも手伝ってもらいました。伐採した直後は、まだ残暑も厳しく、直接日が差して暑く感じましたが、近くにヤマボウシに苗木を植えました。あまり大きくはならない様なので、新しいシンボルツリーとして大切に育てたいと思います。また、伐採した木は1m程幹を残し、いつかそこに彫刻をして残そうと思っています。
 自然災害や異常気象が続いても、今年もちゃんと彼岸花が、お彼岸に合わせるかのように咲きました。人の常識の及ばない不思議な力を感じます。
 参道の古い石段の下にある寺標は、海徳寺の開基家である赤澤家が建立して下さったものです。筆は赤澤家の末裔で、書家の故・赤澤大桐書で、今年は大桐先生の三回忌でした。私も息子と一緒に少しの間でしたが、指導をしていただいておりました。書道の師を失ったことは、とても悲しいことではありますが、こうやって、その書を目にする度に故人の「人となり」までが、鮮やかによみがえります。
 また、このホームページに長い間、寄稿を下さっていた、平林一彦様も、この夏ご逝去されました。感謝の気持ちを込めて送らせていただきました。
 実家やお墓が遠くにあり、盆や彼岸の帰省やお墓参りが叶わなかった方も多いことでしょう。しかし、どこにいても故人を偲ぶことはできるのです。思い出すことも供養です。
 秋のお彼岸のお参りも、お盆と同様、ご自宅に伺うか、寺で住職が行う、またはオンラインで行うという3つの方法を提示させていただいて、各家に選んでいただきました。壇信徒の方々と顔を合わせない日々が続くのは残念ですが、今は心と体の健康を第一に考え、我慢するところは、我慢を続け、工夫できるところは、工夫して、このコロナ禍の時代を乗り切って参りましょう。







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