住職レター 令和2年10月号

 参道のキンモクセイが香り始め、秋まつりの太鼓の音が響くと、秋を感じておりましたが、コロナ禍の影響で、地域の秋まつりは中止となりました。例年でしたら、法被を着た子どもたちが、「おめでとうございます」の元気な声と共に境内に走ってくるのですが、それもなく寂しい秋です。登下校の子どもたちも、ご法事や、お墓まいりで寺を訪れる方々もみなマスク姿なのも見慣れた光景となりました。最近はマスクの代わりに透明なマウスシールドをされている方も多いですが、効果の程はともかく、口元が見えると相手の表情が良くわかってほっとします。マスクの是非には色々な意見があるでしょうが、自分のためというより、相手に対する心遣いとして、私自身は感染症が終息するまでは、外さずにいようと思っています。
 先日、息子たちを連れて、曹洞宗青年会制作の映画「典座−TENZO−」の上映会に行ってまいりました。GOTOキャンペーンが始まっても、我が家では、まだ外出も外食も控えたままです。子どもたちも特に不満を言うわけでもないのですが、たまたま、この上映会のことを知り、1回15名限定で1時間程の上映会なら行ってみようと思いたちました。
 曹洞宗の原則41才以下の若手僧侶で構成される曹洞宗青年会は「古教照心の示訓を旨に自己の研鑽に努め、互いに乳水和合し、自由で創造的な活動を通じ、心豊かな社会を形成する」ことを目的に、昭和50年に発会された会で、私自身も10年程前までは積極的に活動しておりました。 「典座−TENZO−」は「禅を世界へ、そして未来へ」のスローガンのもとに曹洞宗青年会が2年前に制作した映画です。食といのちの循環をテーマに掲げ、食物アレルギーのある子どもを持つ僧侶と、東日本大震災の津波で寺を失った僧侶、二人の日常や葛藤を描き、合間に愛知専門尼僧堂堂長の青山俊薫老師のお話が入るという構成です。特に物語性があるわけではないのですが、時に自分自身と重ね、食へ向き合う姿勢や意味を考えさせられる良い映画でした。息子たちの心にも何かしら残った様子でした。
 10月1日は十五夜でした。10月は二度の満月を見ることができます。今月は曹洞宗の開祖、道元禅師の和歌『濁りなき 心の水にすむ月は 波もくだけて 光とぞなる』 の軸を掛けております。不自由なことの多い日常が続きますが、濁りのない心の中の月は荒波を被ってもなお光輝くという歌の様に、自分の軸をしっかり持って日々を過ごして参りましょう。







前号住職レター一覧次号