住職レター 令和2年3月号

 例年なら日毎に春の陽気に包まれ、心が沸き立つ様な時節ですが、今年は状況が違っています。全世界的に新型コロナウイルス(SARS-CoV2)による感染症の拡大が止まず、危機的な状況が続いております。皆が先の見えない不安と閉塞感を感じられておられることと思います。今、個人で出来る事は、手洗いやアルコールによる消毒をする。十分な睡眠とバランスのよい食事を心がけ、免疫力を高める。咳エチケットを守る。できる限り混雑した場所を避ける。そういった基本的なルールを守る生活を我慢して続けることしかありません。 宗門でも、2月頃から多数が集まる行事などはことごとく中止が発表になり、仏教では非常に大切なことである春彼岸も、合同法要などは多くの寺院で見送られました。海徳寺では、棚経はマスク、手袋着用で行い、茶菓子の接待も無用であると失礼な事前連絡をさせて頂いた上で、体調の悪い方は遠慮なくご辞退くださいと申し上げ、各家庭を回らせていただきました。伺わなかった壇信徒様については寺の方で供養させて頂きました。
 このような非常事態に自宅に僧侶を招くことは、それぞれの考え方があって当然です。ですが、ある高齢の方に「歳をとって寺参りすることもおぼつかなくなりました。盆彼岸に和尚様が来られて話しをするのが何より楽しみです。」とおっしゃって頂きました。普段からこうした声に耳を傾け、このような時こそ宗教者として心に寄り添いたいと改めて感じました。 最後に、3月初旬に愛媛県初の感染者が確認された直後に、愛媛県知事が発せられたメッセージが心に残ったので、紹介します。共に西日本豪雨を体験した県民として、考えさせられました。
 ……最後に ウィルス感染は、ご本人の意思で行われたものではありません。(中略) 未知のウィルスで姿が見えないため、県民の皆さまにとって不安や恐れの気持ちはあろうかと思いますが、こうした方々やその関係者の方々も我々と同じ普通の県民であることに一切変わりはありません。なにとぞこうした方々やその関係者を、地域社会や人の輪から遠ざけることはせず、むしろ「大変だったね」と声をかけていただきたいと思います。 私たちが西日本豪雨で学んだのは、人の絆の強さであり、大切さです。ウィルスを過度に恐れ、地域で共に生きる方々を攻撃・排除したり、傷つけたりするのではなく、むしろ今こそ他人を思いやり、皆で手を取り合って、この不安と危機に対処していきましょう。 (愛媛県ホームページより抜粋)







前号住職レター一覧次号