住職レター 令和2年1月号

 年明け早々、新型コロナウィルスによる新型肺炎のニュースが世間を賑わせております。世界的な大流行になる前に終息に向かう様に望むばかりです。
 令和になって最初のお正月は、十二支の最初の子年です。子年の守り本尊は千手観音様ですが、この仏様は、その名のとおり千の手を持たれ、様々な姿かたちに変身して我々を救って下さいます。
 「子」と言う字は小さい子どもを描いた象形文字で、子どもの髪の毛が伸びることを表しており、動物ではネズミが当てられています。
 ネズミは我々人間にとっては穀物を荒らしたり、健康被害をもたらしたりする迷惑な生き物というイメージですが、実はお釈迦様のお使いであるとも言われている事をご存じですか?
 お釈迦様入滅の際、ご生母の摩耶夫人が天上界からお釈迦様に向かい薬を投げられましたが、沙羅双樹の木に引っかかってしまいます。それを見たネズミが必死で薬を取りに行こうと走りますが、ネコがそれを邪魔したため、お釈迦様の元に届けることができませんでした。
 二月十五日の涅槃会の時に掛けられる「涅槃図」の中には、横たわるお釈迦様の周りに多くの人や生き物が描かれていますが、その中にネコが描かれていないのは、この逸話に由来するためです。
 毎年秋、曹洞宗では「壇信徒研修会」が開催されます。本年は新見市で行われたのですが、講師は災害復興支援アドバイザーで東日本大震災復興支援分室主事をされている福島県の僧侶の方でした。その時話された内容で印象深かったのが「毎年の様に大災害が起こっている。これからの時代に防災は難しい。いかに減災ができるかが重要である」ということでした。いつ何処でどんな災害に遭うかわからない時代です。お釈迦様にために薬を取りに行こうとしたネズミのように、誰かの為に自分が出来ることをしていく力が、これからは求められるのではないでしょうか。個が何よりも尊重される時代の流れに逆行するようですが、自分以外の者のために尽くすこと、他人を思いやる心を持てることで乗り越えることがあると思います。ひとりひとりが優しいネズミの気持ちを持って、この子年を過ごしていきたいと思います。








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