住職レター H31年1月号

 明けましておめでとうございます
 昨年は豪雨災害により県内各地が大変な被害を被りました。年末の風物詩である清水寺の今年を表す一文字でも「災」という文字が選ばれました。改めて平和の意味や、日常のありがたさと脆さなどを考えさせられる一年でありました。
 昨年末の出来事ですが、葬儀を終えて、火葬場に向かう途中で、霊柩車が脱輪するという事故に遭遇しました。霊柩車が先頭を進み、私はそれに続くタクシーに乗っておりました。霊柩車は、山道のコーナーを曲がると山側に傾いて止まっていました。助手席には喪主の方が乗っておられ、運転手さんも、普通の乗用車ではないので、後続の車列や速度には十分気を配りながら走行していたはずです。数十年の僧侶生活の中でも初めて経験する出来事でした。
 アニメにもなったあの一休さんは、とんち小僧として明るく楽しいイメージですが、実像は破天荒な言動が多く、形だけとなった禅を批判し、当時は破戒僧とも呼ばれていました。正月の賑わっている辻に立ち、杖の先に髑髏をつけ「ご用心。ご用心。」と町の人々に嫌がられるのも厭わず喜びに浮き足立っている事への警告をして回ったそうです。
 霊柩車の運転手さんは気を配りながら慎重に運転していたにも関わらず、事故は起きてしまいました。天災もそうですが、自分ではどうしようも無い災いは確かにあります。しかし、ただ漫然としていては「災」が起きた時に手も足も出せなくなります。ぜひ「ご用心」しながら「災」に立ち向かえる様に心がけましょう。
 さて、今年の干支は「亥」ですが、近年はあまりありがたくない話題をよく聞くようになってきました。近隣でも猪による農作物への被害が出ております。また、ニュース等でも、住宅街に出没して通行人に危害を加える事例を聞くようになりました。山間部での被害はもっと顕著で、その怖さや苦労は大変なものだそうです。
 しかし猪はその力強さから「無病息災」の象徴にもなっています。災害とも猪とも上手に共存することは難しいですが、それでも前に向いて、災にも猪突猛進して突き抜けるが如くの勢いで新しい年を駆け抜けてまいりましょう。








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