住職レター H30年9月号

 平成三十年七月豪雨からの復興もままならない中、連日猛暑、北海道の地震、甚大な台風被害と立て続けに天災に見舞われ、人々の心も疲弊している気がします。
 「しかし災難に遭う時節には災難に遭うがよく候 死ぬ時節には死ぬがよく候 是はこれ災難をのがるる妙法にて候」
 (災難にあったら心して災難を受け入れなさい。自分が死ぬ時は静かに死を受け入れなさい。これこそが災難にあわない秘訣です。)

 これは良寛が大地震で被災した友に宛てた文の中の言葉です。災害に遭う人にかけるには、余りに心ない冷たい言葉ではないのか?ともとれますが、仏教の教えである「苦」の理解を見事に表した言葉でもあります。「現実を受け止めることが出来ないことから、苦悩が始まる」というのが、仏教の教えだからです。
 もちろん、災害に遭わない様に十分な備えをすること、危ないと思ったらすぐに逃げることは絶対に必要なことです。その上で、どうにもならないことはあります。
 どんな人も平等に、生老病死からは逃れることはできません。あるがままを受け入れ、それでも一生懸命生きることしか道はないのです。
 とは言え、実際に苦や死を目前にして、粛々と受け止めるのは簡単ではありません。しかし、幸いなことに私は身近で、親や先輩にそういう姿を見せていただきました。言葉ではなく行動で教えを示すことができる、そんな姿を見せることができる様に精進したいと思います。
 異常気象が続いても、秋の花が咲き、実をつけています。こんな季節の移り変わりにも、癒やされ、教えられております。








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