住職レター H29年5月号

今年の春は少し寒くて、花の便りも例年より遅めでした。ソメイヨシノが終わってしばらくすると、裏山道沿いに咲く100本近い八重桜が盛りを迎えます。これは、30年程前、地元の方が苗木を植えられ、手入れを続けてこられたそうです。立派に育って毎年美しい花を咲かせ、花見に来られる方々の目を楽しませています。
 新聞やローカルニュースでも度々取り上げられるので、この時期には、寺に寄って下さる方も増えます。中には永代供養墓を探しておられる方もおられ、話を聞いて行かれましたが、鯉のぼりが上がっているのを見て喜ばれていました。最近は鯉のぼりを上げている家も少ないので、そのためかと思いましたら、寺に跡継ぎの男の子がいるのが嬉しいのだとか…。永代供養墓を探している方は単に墓を探しているというだけでなく、自分たちの墓をこの先もずっと供養してくれる人が欲しいのだということに改めて気づかされる出来事でした。檀信徒の方が寺の後継者を気にするのは、この先も自分たちの檀那寺が興隆を続けて欲しいという願いでもあるのだと思いました。
 私は親の跡を継いで住職になりました。当時はまだ、美容院の子が美容師になり、畳屋の子が畳職人になるのは当たり前で、私自身、僧侶になることに何の疑いも持ちませんでした。でも今はそんな時代ではなく、我が家の息子たちにも僧侶になることを無理強いするつもりはありませんでした。それでも一応、僧侶としてのステップは踏ませてきました。しかし「寺」という存在の意味や『僧侶』という職業の特殊性を考えた時、息子たちにも、それなりの覚悟は持つようにしっかりと伝えておかなければならないと、改めて感じる出来事でした。








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