住職レター H28年3月号

 「三寒四温」は冬の季語だそうですが、3月に入っても、そんなジェットコースターの様な天候が続いています。あまりの気温差に体調がついて行けておりませんが、そうこう言っている間に気が付けばお彼岸です。
 桜便りにはまだ早いですが、その前にサクランボが可愛い花を咲かせていて、一足早いお花見気分を楽しんでいます。
 いつもこの時期になると、妻がせっせと作っているのが、柑橘類のピールです。瀬戸内の温暖な気候に合うのか、文旦、八朔、夏みかん、レモンなどを作っておられる方が多く、たくさん頂くので、マーマレードやピールにして楽しんでいます。無農薬で作られた果実は痛みやすいですが、その分安心して、皮まで美味しく頂けるのです。柚子や庭にある金柑も美味しいピールになります。マーマレードは毎朝いただく手作りヨーグルトにかけたり、パンにつけたりするほかに、鶏肉を煮たり、ケーキに入れても美味しいものです。ピールも日持ちがして、お菓子作りにも重宝します。ほろ苦い甘さは後を引く美味しさです。
 私が大好きな春の山菜も、ほろ苦さが特徴です。ふきのとうやワラビ、ウド、こごみなど、独特のアク強さやエグミがありますが、大人になると、それがとても好ましく思えるのは何故でしょうか?子どもは本能的に「苦味」=「危険」と捉え、苦い味は嫌うのだそうです。
 本来、苦い物は毒ですが、人は、子どもの時は苦味を嫌うけれど、歳を重ねるごとに苦いものが平気になっていく。つまり「苦味」とは、苦い物全てが毒ではないことを経験上知っている人間だけが好む味だそうです。つまり長生きをしないと知りえない美味しさだと思えば、歳を重ねるのも悪くないことだと、つくづく思います。








前号住職レター一覧次号