住職レター H26年4月号

中国研修旅行 そのA

 天童寺の参道に向かうと、売店の方達から機関銃のような中国語の歓迎?を受けます。それらを躱してまず右手の山裾の奥にある古天童寺や歴代住職の墓所などをお参りし、それから天童寺の諸堂を拝観させて頂きながら感じたのは、道元禅師様のこの寺に対する思いでした。 初めて見る風景の筈なのに、その中に永平寺が重なって見えるのです。諸堂拝観の途中では思わぬ所で坐禅をする修行僧を見ました。似ているのは建物の作りだけではありませんでした。
 夕食は無論精進料理でしたが、様々な工夫が施されていて、とても参考になりました。典座和尚様と話す機会を頂き、印象深い話をお聞きました。「食事の後、私は色々な意見をもらいます。美味しかったよ、という人もいれば今日の味付けは薄かった、逆に濃かったという人もいます。これは中国全土、様々な食文化の地から集まってきているので仕方ない事かもしれませんが、私はいつか全員が今日は美味しかったよ、と言ってくれる日を目指して頑張っています。実現することは非常に難しいと思うし、そんな日は来ないかもしれませんが、それでも私はその日を目指して毎日、食事を作っているのです。」…と、穏やかな笑顔でおっしゃいました。この言葉は私にとって忘れられない思い出となりました。
 食後は夜坐の随喜をさせて頂きました。夜坐は僧侶だけで行う為、ガイドは付きませんが、道元禅師様が修行された場所なので、それなりに解るだろうと思っていましたが、その思いはあっけなく崩れました。音を立てて閉まる扉、行茶の作法、走る経行、面壁でなく壁を背にしての坐禅、一?の時間が一時間半、と戸惑う事ばかりでしたが、そこには生活の一部としての坐禅があったように思います。
 日本人と仏教、日本のお寺の在り方を改めて考えさせられた旅でした。





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