住職レター H26年2月号

 豆まきをして、立春を迎えた後、急に寒くなりました。温暖な倉敷でこんなに積もったのは近年にないことです。
 午前中、法事に出掛けるためタクシーを呼ぼうと電話しましたが、ドライバーさんがみなさん出社できていないので、車は出せないとのことでした。結局ご当家で雪道仕様の自家用車をお持ちの方にお世話になることになりました。
 平成16年の12月も押し迫っていた頃、やはり近年にない大雪が降りました。その頃母が闘病中で岡山の病院に入院しており、その日は私が付き添っていました。雪はだんだん激しくなり、交代に来てくれる筈だった姉も電車が不通で叶わず、間近に迫る除夜の鐘の準備だとか、年始の用意などの事を思い煩っておりましたが、どうすることもできず、とうとう二泊三日、病院に詰めることになりました。年末で静まりかえった院内で、昏睡状態の母もまた静かに眠っており、その傍らで本を読んだり、時々は一方的に話しかけたりしながら、ずっと二人きりで過ごしました。18歳で上京してから二十年間、四国、九州、北海道、大阪と全国をまわり、故郷に帰ってからも、こうして母と静かに過ごすことなどなかったのです。思いがけない雪が母と私に与えてくれた、今思えば貴重な時間でした。
 年明けて正月の二日、母は、雪が止んで駆けつけた夫と4人の子供たちの到着を待っていた様に、穏やかに旅立ちました。





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