住職レター H26年10月号

 当寺の弁天池は、現在石垣だけが残されています。私が子供の頃はまだ屋根が残っていましたが、既に弁天様はいらっしゃいませんでした。近所の年配の方は弁天様がお祀りされていたのを見たと言われるのですが、いつどのような経緯で無くなったのか、もう確かめる術もありません。
 弁天様はもともと古代インドの川の神であり、水神、農業神として崇拝されていました。当所は8本の腕に宝珠、剣、弓矢、金剛杵等を持った八臂像でしたが、鎌倉時代になり、2本腕で膝を立て琵琶を弾く姿に変わっていき、芸能の神として祀られる様になりました。また、江戸時代になると弁天より現世利益の財を強調した弁才天(弁財天)となり、七福神の一神とされます。また日本古来の農業、食物、財福の神とされる宇賀神と一体化し、弁天の頭上に宇賀神が載った宇賀弁才天としても信仰されました。宇賀神は老人の頭に白蛇の姿をしているといわれ、蛇身の弁天像もあります。
 数十年の時を経て、お寺に弁天様の像が再びいらっしゃいました。私が活動している仏像彫刻の会のご縁で、長年、仏像彫刻に精進され今まで数えきれない作品を生み出して来られた森富子さんに制作をお願いしました。とてもやわらかな表情の弁天様で、お顔を見ているだけで穏やかな気持ちになります。お堂もやはり仏像彫刻のご縁で美星町の工房で購入させて頂きました。弁天堂の修理に取り掛かるにはまだまだハードルが高いですが、何とか私の代で復旧したいと願うところです。それまで本堂で、待っていて頂きたいと思います。




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