住職レター H25年8月号

 庭の小さなプラスチック容器に植えた蓮が次々と花を咲かせています。境内の弁天池にも近所の方が苦心して何度も植えてくださったのですが、この池が雨が少ないと干からび、大雨が続くと溢れそうになり…と、なかなか水量が一定しません。せっかく初夏に根づいたと思ったら、このところの豪雨であっという間に水没してしまいました。
 蓮は泥水の中から生じ、泥に染まらず美しい花を咲かせることから、汚れなき清浄な花とされ「泥中の蓮華(汚泥不染の徳)」=おさとりと言われます。お釈迦様のお座りになる座は蓮華座と呼ばれますし、蓮を抱いた仏像もたくさん見られるように仏教と深いかかわりのある花なのです。
 また、蓮は、過去・現在・未来を同時に体現しています。普通の花はまず花が咲いて、その後に実をつけますが、蓮は花をつけると同時に実を中に詰めた苞が出てきます。現世に過去・現在・未来という三世が備わっているものは蓮以外にはないと言われます。
 生涯は常に『今』の積み重ねです。その気高く優美な花を眺めていると不思議なほど心が安らぐのは、1億4千年前には地球上に存在していたと言われる蓮の花が常に『今』を見続けてきたからでしょうか。




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