住職レター H24年5月号

 五月に入り、五色の仏旗がはためいていた参道のポールに鯉のぼりを上げました。小さい緋鯉は子供たち…と歌われますが、一番小さい緋鯉はまるで金魚の様です。でも我が家の末っ子同様負けん気強く、大きい鯉に負けじと五月の空を優雅に泳いでいます。
 今年は檀信徒の方から、家庭を構えた息子さんが子供の頃に飾られていた、それは立派な兜甲冑の段飾りを譲り受けました。新居には大きすぎて飾り辛いという理由だそうです。婦人会員さんからも登り鯉のちぎり絵をいただいたり、知り合いの老夫人がデイサービスのリハビリで作られた鯉のぼりの色紙細工をくださったり、ひなまつり程ではないにしろ、我が家の玄関まわりは賑わっています。
 鯉のぼりの由来は中国の故事です。その昔中国では、黄河の上流にある「竜門」という激しい滝を登り切った鯉は竜になれると言い伝えがありました。いわゆる「鯉の滝登り」ですが、「登竜門」という言葉もここから来ています。そして、その故事をもとに日本では子供の健康と立身出世を願って鯉のぼりが飾られるようになったそうです。今のご時世、我が子に立身出世を願う親御さんは少ないかもしれません。そのせいではないでしょうが、五月の空に泳ぐ鯉のぼりの数も少なくなってきたように思います。都会ならまだしも瀬戸内の田舎町のこの辺りもほとんど見かけません。
 私が子供の頃の鯉のぼりは綿素材だったため、夕方には取り込み、雨が降るとあわてて下ろしていました。今は化繊なので、強風の時以外はあげっぱなしにしています。鯉のぼりも過労気味かも知れませんが、五月の空に鯉のぼりが泳いでないのは寂しいというか、落ち着かないというか…。
 息子たちが巣立って行っても、中年になっても私が元気な間は鯉のぼりをあげ続けて行きたいと思っています。






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