五分咲きの桜


縁あって横浜からいらした十二神将


工事の進む開山堂(内側)


開山堂(外側)
住職レター H23年4月号

 庭の桜が咲きはじめました。
 日本中が喪に服したあの日からもうすぐひと月が過ぎようとしています。
 今なお毎日の様に遺体は増え続け、死者・不明者は3万名に迫り、避難所で不自由な生活をおくられていらっしゃる方も16万名余にものぼります。
 被災に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げます。また警察、消防、自衛隊、原子炉復旧スタッフ、医療チーム、ボランティア等、復旧やケアにご尽力の全ての方々に感謝申し上げたいと思います。
 私の所属する全国曹洞宗青年会の会長は奇しくも福島県の方で、ご自分の寺も大変な被害にあっているにも関わらず、日夜情報収集や復旧支援に飛び回っておられます。また、火葬場に詰めて回向を続けていらっしゃる会員もおられます。
 その他にも、傾聴ボランティア、行茶、足湯などを行い、ボランティアの自己本位でなく、被災者本位の原則に留意し、被災者の心に寄り添い、苦しみを分かち合う慈悲心での活動を目指しております。
 西日本は、今は物資の支援、托鉢などによる義捐金活動などの後方支援に甘んじるしかありません。
 中・長期的な、地域に根ざした僧侶 (寺院)としての特性をいかした被災者の復興支援とは何か?自分に問う日々です。
 震災の影響を受けてない地域に暮らす者は、時に自分の恵まれた環境にさえ罪悪感を感じたり、無力感にさいなまれます。何を語ってもそらぞらしく思えることがあります。でもおそらく日本中の人々が、老人から子供に到るまでが、いまの自分に何が出来るかを考えていらっしゃるでしょう。それこそが意味のあることだと思います。
 人を、街をさらっていった大災害にみまわれたこの国に、それでも桜は美しく咲き始めました。花見の自粛を呼びかけた自治体もありますが、言われなくても桜の下で酒を飲み騒ぐ気持ちにはなれません。でも、昔から日本人に愛されて来たこの花には、心を癒す力があります。避難所の近くにも桜は咲くだろうか?…咲いて欲しい…とただ祈る思いです。





前号住職レター一覧次号