干し柿と紫蘇の葉茶



住職レター H23年10月号


 暦の上では霜降となり、朝晩の冷え込みが厳しくなってまいりましたが、この寒暖差こそが美しい紅葉をプレゼントしてくれます。
栗の仕事が終わり、今度は銀杏の「しょうやく」です。拾った銀杏の実を何日か水につけて、やわらかくなった実をつぶして中の種だけ取り出して、何度も水を替えて丁寧に洗ってザルに並べて干します。干した銀杏はほうろくで炒めるか封筒に入れてレンジで温める方法もありますが、それを割って更に薄皮をむきます。そうしてやっと食材の銀杏になるのです。美味しく頂くにはたくさんの手間がかかります。「しょうやく」とは岡山弁ですが、「丁寧に下処理をする」といった意味でしょうか。基本的に面倒で手間のかかる仕事のことを指すようです。若い方は使われないですが、この言葉の持つ微妙なニュアンスは他の言葉では表せない素晴らしい方言だと思います。
料理を含めた日常の行いそれ自体がすでに仏道の実践であると、道元禅師は『典座教訓』や『赴粥飯法』で説かれておられます。料理を支度することが重要な修行のひとつだとすれば、「しょうやく」もまた素晴らしい禅の実践でしょう。
我が家の縁側には銀杏をはじめ、きのこ、椎茸の軸、干し柿、紫蘇などが干されています。冷凍庫には春のキャラブキやふきのとう味噌、夏の豆類や秋の栗の甘露煮や渋川煮など「しょうやく」され手をかけられた大地の恵みが来たる冬に向けてスタンバイしてくれております。








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