住職レター 令和7年10月号

 10月下旬の土日に、高梁市の龍徳院さまで「晋山結成(しんさんけっせい《がとり行われました。晋山式(しんさんしき)というのは、寺院において新たに住職となった僧侶(新命方丈)がその寺院に晋む(=進む)ことで、「 方丈( ほうじょう) 《とは住職の居室のことを差し、つまり、その居室にいる人という意味です。
 ですから、新たに住職任命を受けた僧侶がそのお寺に入寺する、住職や檀信徒さまにとっては、一世一代のとても大切な儀式です。
 また、結制法要とは、その新命住職が最高の法階である大和尚の位に就くための、これもまた大切な儀式です。
 有縁の数十吊の和尚さま方が県内外から集まり、国土万民の幸福を祈るとともに、新住職の力量が試される禅問答が行われます。これは曹洞宗の儀式の中で最も重要なもので、住職にとっても生涯一度の式典です。
 晋山結成の中に、「首座法戦式(しゅそ ほっせんしき)《という重要な役割を担う儀式があります。首座法戦式とは、修行僧のリーダーである首座が、住職に代わり仏法と説くというものです。 この度は、二男がこの大役をつとめさせていただきました。仏教学部に席を置いている大学生とはいえ、まだまだ、半人前ではありますが、新命和尚さまとは親戚関係(はとこ同志)に当たることから、このご縁をいただきました。所作もろくに教えてはおらず、県外で離れて暮らしているため、日々指導することもままならず、心配は尽きませんでした。でも、学業と折り合いをつけながら、幾度も帰省し、ならし(予行練習)に参加して少しずつ形になっていきました。本番では「今までで一番良かった《と、色々な方からお褒めいただき、胸をなでおろしました。首座をつとめるという事も一生に一度の大事ですので、本人にも貴重な経験であっただろうと思います。
 晋山結成本番の日曜日は、新命和尚さまが稚児を引き連れて山門まで歩きます。この稚児行列に参加するために、孫も県外からやって来ました。我が家の子どもたち全員が稚児行列を経験しているので、孫にも参加させたかった夢が叶いました。雨予報で心配しましたが、降られることなく、稚児行列も無事にお寺までたどり着くことができました。山門をくぐり、灌頂師さんから頭の頂に智恵の水をいただき、佛の子としての位を授けられました。
 二男が首座を引き受けると決まった時から、一年間、我が家はそのことを中心に廻ってきたように思います。長男に続き、二人の弟子の首座法戦式を本師として見守ることが出来たのは、大変幸せなことでした。難しい口上や所作を覚えて、頑張った二男を褒めてやりたい気持ちと、今は、やっと終わったという解放感で一杯です。









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