住職レター 令和6年9月号

 8月に夏休みが取れなかった長男が、9月初めに帰省して参りました。どこか行きたい場所があるか尋ねると「瀬戸大橋を渡って四国にドライブしたい」というので、親子三人で行ってまいりました。
 最初に訪れたのは四国霊場第75番札所の総本山善通寺です。私は10年程前に四国八十八か所霊場巡りをした時以来です。その時は、時間に追われていて境内を散策することもありませんでした。
 善通寺は弘法大師がご誕生された御影堂を中心とする西院の「誕生院」と「伽藍、金道、五重塔」の立ち並ぶ東院の東西二院に分けられた広大なお寺です。今回は御影堂の地下の真っ暗な通路をめぐる「戒壇めぐり」にも行き、宝物館も拝観しました。
 善通寺の境内をゆっくりと散策した後は、琴平町に向かい、金刀比羅宮に参拝しました。表参道から御本宮までは785段の石段で、それだけでも大変な道のりですが、長男は若いだけあって、さらに583段を上り、厳魂神社(奥社)へ一人でお参りしました。酷暑日でもあり、お参りの人も少な目でした。
 9月9日は五節句のひとつである「重陽の節句」です。陽数の最大値の「9」が重なるため「重陽」と呼びます。旧暦の9月9日は、菊が美しく咲く時期です。菊は邪気を払い長寿の効能があると信じられていました。菊を行事に用いたため、重陽の節句は別名「菊の節句」とも呼ばれます。重陽の節句には、菊酒を飲むなどして無病息災や長寿を願います。また、その日は、平和の鐘つきの日です。戦争の放棄などを定めた日本国憲法第9条にちなみ、「9月9日午前9時9分」に、世界平和を願って鐘をつきます。
 今年の秋彼岸も、昨年同様に、ご自宅のお仏壇でのお参りか、お寺での合同法要かを選んでいただきました。昨年に比べるとご自宅を選ばれる方が増えたように思います。ご家族揃ってお仏壇に向かい、ご先祖さまに手を合わせる光景は良いものです。
 9月最終日は、矢掛の大通寺様を会場に開催された特派布教会に寺族、檀信徒様と共に行ってまいりました。山形県松林寺ご住職の三部義道特派布教師より、管長告諭に従いご法話をいただきました。
 今年の9月も真夏の続きのような猛暑日が続き、毎日水やりをしていても、枯れてしまう草木を見るとたまらない気持ちになります。一方、雑草は少しの雨でもたくましく元気に伸びています。植物学者の牧野富太郎さんは「雑草という草はない」と言われ、カトリック修道女の渡辺和子さんは「雑用という仕事はない」とおっしゃいましたが、法務や宗門行事、家庭や地域の用事などに追われた9月も、酷暑と多忙の中で、慌ただしく日々を過ごしてしまいました。
 ですが、朝晩が過ごしやすくなり、少しだけ秋を感じるようになりました。気候が激変して、季節感が薄れていっていますが、重陽などの五節句に代表される日本の行事やしきたりにも目を向けて、先祖供養などの無くしてはいけない心を大切に過ごしていきたいと思います。









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