住職レター 令和6年5月号

 3年前から計画していた壇信徒参拝がようやく実現しました。計画をたてた途端にコロナ禍の日々になり、やっと案内を出したところで、能登が大地震に見舞われました。今年は曹洞宗の教えを広く世の中にお伝えになった、大本山總持寺開山太祖瑩山禅師700回大遠忌法要(だいおんきほうよう)の年にあたりますので、瑩山禅師が能登の門前に開かれた總持寺祖院への参拝を計画しておりましたが、前号でお伝えしたとおり、能登はまだまだ復興がなされてなくて、祖院も立ち入り禁止のため、やむなく行き先変更となりました。17年前の平成19年能登半島地震では、全国の曹洞宗関係者や地域の方々の寄付などにより、復興を遂げることができましたが、完全復興から3年経たずに起きた今回の地震では、修復費用の目処が立たない状況です。しかし、この寺の復興こそが地域住民にとって希望の光となり、門前町の復興プロセスにおいて重要な役割を果たすと考えられ、その中でも修行道場としての拠点である「坐禅堂」は、通常の修行生活を取り戻すため一刻も早い復興が望まれるため、現在、「坐禅堂」修復プロジェクトとのクラウドファンディングが立ち上がっています。興味のある方はぜひご協力ください。
 祖院参拝の代わりに、行き先は永平寺になりました。福井県の大本山永平寺は曹洞宗の開祖道元禅師が開かれたお寺で、曹洞宗の第一修行道場です。今でも深山幽谷の地にたたずむ山門、仏殿、法堂、僧堂、庫院、浴室、東司の七堂伽藍では、修行僧が道元禅師により定められた厳しい作法に従って禅の修行を営んでいます。いつ来てもその荘厳なたたずまいに圧倒されます。山内に宿泊して、坐禅や法話などを体験しました。中でも大勢の僧侶や修行僧たちと共に朝課に参加したことは壇信徒様たちにとってとても良い経験になったことと思います。
 永平寺を出てからは、朝3時に起きで、バスの中で睡魔に襲われながらも、次の目的地の、高岡市にある曹洞宗瑞龍寺に向いました。瑞龍寺は、加賀藩2代藩主前田利長公の菩提をとむらうために建立された寺で、山門、仏殿、法堂が国宝に指定され、総門、禅堂、大庫裏、回廊、大茶堂が国の重要文化財に指定されています。ご住職自ら案内をしてくださり、パンフレットには決して書かれていないご自身の言葉での説明がとても興味深く、楽しい時間を過ごしました。その後は金沢に向かい、ひがし茶屋町、兼六園、21世紀美術館などを散策して過ごし、加賀温泉郷のひとつ片山津温泉に泊まりました。前夜と全く違い、温泉を楽しみ、宴会で親睦を深めました。最終日は九谷焼、日本海さかな町を見学して、最後に訪れたのはユネスコ世界記憶遺産に選ばれた舞鶴引揚記念館です。舞鶴港は、旧満州やシベリアなどから約66万人の引揚者を迎え入れた港で、その引き揚げとシベリア抑留の史実を伝える記念館です。未だ世界では戦争や紛争が絶えませんが、平和の尊さに改めて思いをよせました。
 当初より人数も減りこじんまりしたバスの旅でしたが、アットホームで和やかな壇信徒参拝になりました。









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