住職レター 令和4年4月号

 ソメイヨシノが葉桜になり、裏山の八重桜並木が満開になってきた頃、今月1度目の写経会に合わせて、降誕会(花祭り)法要を行いました。八重桜やアヤメ類、矢車草など境内の花を中心に花御堂を飾りました。花御堂を花で飾るのは、お釈迦さまがお生まれになったルンビニの花園を表しているからです。生まれたばかりのお釈迦様の姿である誕生仏さまを銀のダライの中心に安置して、読経をした後、甘茶を誕生仏さまに注いでお祝いをしました。甘茶は今年も奈良県吉野のお寺の奥さまから届いた地元産のものを煮出しました。甘茶を注ぐのは、お釈迦さまがお生まれになった際、9頭の龍が天から現れ、お釈迦様の頭から甘露の雨を降らせ祝福したという言い伝えからきています。また、生まれたばかりのお釈迦さまはすぐに立ちあがって7歩あるき、右手は空を、左手で大地を指して「天上天下唯我独尊(どこを見渡して見ても、我、ただ一人の尊い命)」と言われたといいます。誕生仏さまは、その時のポーズをとられています。また、この言葉は「自分より尊い者はいない」と尊大な意味に取られることが多いですが、忘れてはいけないのは、この世に存在するすべての命に当てはまることであり、それは現在(いま)を生かされている命だけでなく、過去に生かされていた命も、未来を生かされていく命もすべてということです。「すべての命は大切な命である!」コロナ禍やウクライナ侵攻など、心塞がれることの多い時勢柄、この言葉の意味を改めて噛みしめたいと思います。
 さて、お寺の竹林の中に老朽化した大師堂があります。現在は傷みが激しくて近づくと危険なため、使用しておりません。祀られていた弘法大師さまも本堂に避難されていて今は無人になった御堂の床から、この春、タケノコが生えてきました。床を突き破り、畳を押し上げてぐんぐん伸びています。地元玉島には、有名な「良寛さんとタケノコ」というお話が伝わっています。五合庵に住まれていた良寛さまが、庵の床下に生えてきたタケノコを可哀想におもい、床を外してやり、そのうち屋根に届いたタケノコを可哀想におもい、屋根を外してやったというお話です。先日は地元のケーブルテレビの方が取材に来られ、テレビ放送もされましたが、その時には畳を押し上げていたタケノコが、1週間経った今では天井に届いています。老朽化著しくて取り壊すことも考えていた建物なので、良寛さまのように屋根を外してやるのがいいのか、そのままにしておくか悩ましいところです。もう暫くタケノコの成長を楽しみに見守りたいと思います。







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