住職レター 令和元年9月号

 「暑さ寒さも彼岸まで」との慣用句のとおり、朝晩が急に寒くなってまいりました。
 今年の夏は冷夏だと思っていたら、急に猛暑になり、いきなり大雨が降るなど、ジェットコースターの様な天候で、体調を整えるのも大変でしたが、ようやく秋が来たようです。とは言え、沖縄、九州、千葉などの各地で、今年も台風や自然災害に苦しめられ、まだ復旧ままならない地域の皆さまには、心よりお見舞い申し上げます。
 ここ岡山県でも昨年の西日本豪雨を思い出させる程の豪雨に見舞われ、土砂崩れも各地でおこりました。特に局地的な豪雨があった新見市では、同じ曹洞宗の御寺院様が土砂被害に遭われて、岡山県青年会を中心に土砂撤去作業が行われました。
 毎年お彼岸の時期を迎えると、銀杏や栗が落ち始めます。自然の恵みはありがたいのですが、忙しい時期でもあり、いつも時間との戦いになります。しかし無心に栗を剥く作業は慌ただしい日々の中、心を落ち着かせてくれます。修行道場でことの外「作務」が重視されるのは、さとりが観念的に終わってしまうなど、現実と遊離しないように、自分の肉体を使っての作業が修行には必要だからです。
 今年も丁寧に渋皮を残して皮を剥き、渋皮煮を作っております。作業工程もいくつかあり、手間がかかる一品なのですが、道元禅師が残された「他は是吾にあらず 更に何れの時をか待たん」(他の者にさせたのでは、自分の修行とはなりません。今修行しないでいつするというのでしょう)という教えのとおり、自分の手で最後まで作ろうと思います。道元禅師は『典座教訓(てんぞきょうくん)』という書を著し、「食」に関する金言を示されております。「食」が軽視され、どこでも簡単にすぐに食べられるものが世に氾濫し、更には大量の食品ロスを招いているこの時代にこそ、贅沢なものではなく、きちんと手をかけた「食」を伝えていきたいものだと思っております。








前号住職レター一覧次号