住職レター H28年9月号

 このところ立て続けに台風が上陸しております。日本中のいたるところで「今までに経験したことのないような大雨」が降っている始末です。
 9月の始まりは、雑草も枯れるくらいに降らなかったのですが、お彼岸に入ってからというもの、連日、雨続きです。例年ですと近所は原付バイクでお参りをするのですが、それも叶いませんでした。
 それでも、お彼岸の声を聞く頃、白や赤の彼岸花が咲きました。残暑厳しい年も、雨が多すぎる年も、水枯れの年も、時期を間違わずにこの花は咲きます。
 彼岸花の生態は変わっていて、普通の植物は、春〜夏に芽を出して花を咲かせ、秋の終わりに葉を落とし冬に休眠しますが、全く正反対の咲き方をします。
 球根類は、高温や低温、極端に乾燥する期間があるなど、植物が生育するのに相応しくない期間をじっと耐えるために、地下に養水分を貯蔵することで、他の植物が生育できないようなところでも生きていくことができます。
 彼岸花は、他の植物が旺盛に生育する春から夏にかけては、背の高い植物の陰になって、十分に太陽の光を受けられないため球根だけになって地下に潜り、初秋に花を咲かせた後に葉を出して、周りに植物の少ない冬の間に日光を浴びて光合成に励み、養分を球根に蓄えていきます。そしてまた春を迎えて、周りの植物たちが生育を始める頃には、葉を枯らして十分に蓄えた養分を使って,地下の球根内で次の花を咲かせる準備をするのです。何とも賢い花ではありませんか。大きな自然災害を前にして無力な私たちではありますが、この美しい花のしぶとさを見習って、たくましく生きていきたいものです。








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