住職レター H28年11月号

 曹洞宗岡山県宗務所では、毎年秋に「檀信徒地方研修会が開催されます。今年は、マービーふれあいセンター行われ、県内の住職、寺族と檀信徒約600名が参加しました。
 研修会の講師は、チベット出身の声楽家「バイマーヤンジン」さんで、そのお名前の意味は「蓮の花にのった音楽の神様」だそうです。その名のとおり、最後に1曲だけ聞かせていただいた、その歌声は芳醇で心揺さぶられる調べでした。
 ヤンジンさんの生まれた村は標高が富士山よりも高く、樹木の育たない遊牧民の貧しい村で、ほとんどの人が字も読めません。両親と兄弟の尽力で中国の大学に進んだ後、日本人の夫と結婚して来日したヤンジンさんは、この国の豊かさや便利さ、清潔な環境に大きなカルチャーショックを受けたそうです。
 水葬があるため、チベットでは魚を触ってもいけないので、最初は絶対食べられず逃げ回ったこと…、反対に、夫がチベットへ来たとき、牛の頭を一晩煮た心尽くしのご馳走を食べてもらえず悲しかったこと…。そんな体験をユーモラスに語る一方、今でも貧しいチベットと日本の違いは「教育」にあると確信し、祖国の学校建設に尽力されておられます。
 これ程、恵まれた環境にいる日本人の多くが、その幸せを分かっていないことを懸念され、また日本人の多くが子供の世話になりたがらないことにも言及され、それが寂しいと言われます。
 「世話になったら、ありがとうと言えばよい。自分たちが苦労して育てた次の世代に世話を掛けるのは当たり前。苦労しないと大切な物に気付かない」との、お言葉には、多くの参加者の皆様が頷きながら聞いておられたのが印象的でした。








前号住職レター一覧次号